いのちと健康センター(2020/10/01 No.152)

もしも日本が一日6時間・週休2日制だったら

8月24日、フィンランドのサンナ・マリン首相(34)が「労働時間の短縮を実現するために、明確なビジョンと具体的なロードマップを作成する必要がある」と表明し、話題になっています。

マリン首相は「労働時間の短縮は、高い就業率や堅固な財政を実現すると言う私たちの目標と矛盾するものでない」「それぞれの国民が労働生産性を向上させるために努力すべき
だ」とし、「富を公正に分配する方法のひとつは、労働条件を改善し、収入を減らすことなく労働時間を短縮することだ」との自身の考えを表明し、「フィンランドでは社会民主
党が目標としてきた1日8時間労働で週休2日制に移行した後も賃金は減ることなく、数十年かけて増え続けている」と説明しました。

日本は1日8時間、年間2000時間

日本の全労働者の平均労働時間は1700時間と確かに減っていますが、正規労働者は2000時間です。

労働時間を1日6時間、週30時間に短縮するには、出勤時間を1時間遅くし、退勤時間を1時間繰り上げるというイメージで賃金は現状維持と言えば、「非現実的な夢物語」と一蹴されるかもしれません。しかし、これはドイツの水準で、ドイツは欧州屈指の安定成長を遂げています。

日本もそうあって欲しいものです。

生産性はOECD36か国中、20位

日本の経営者は、90年代から新自由主義推進の姿勢から一貫して解雇規制緩和や非正規雇用職種の拡大、最低賃金引き上げ反対、公務員削減、人件費削減に力を注いできました。
ところが日本の労働生産性は、OECD加盟36か国中20位前後です。

日本社会は、30年ほど前までは土曜日も働いていたわけですから、時代の流れは労働時間の短縮と労働生産性改善をの方法を模索しているともいえます。

しかし、人減らし合理化だけでは、仕事に対するパフォーマンス改善もモチベーションの向上も期待できません。

1日6時間労働で家族的責任を果たせる人間らしい働き方で、モチベーションを高めパフォーマンスを改善し、生産性も上げましょう。

10月1日から全国衛生週間
スローガン みなおして・職場の環境・体の健康

全国衛生週間は、労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での自主的な活動を促して労働者の健康を確保することなどを目的に昭和25年から毎年実施しているもので、今年で71回目になります。

毎年10月1日から7日までを本週間、9月1日から30日までを準備期間とし、各職場で
職場巡視やスローガン掲示、労働衛生に関する講習会・見学会の開催など、さまざまな取組みを展開します。

今年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、いわゆる“3つの密”(1.密閉空間〔換気の悪い密閉空間である〕、2.密集空間〔多くの人が密集している〕、3.密接空間〔お互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる〕)を避けることを徹底しつつ、各事業場の労使協力のもと、全国労働衛生週間を実施することとしています。さて、あなたの職場でも、しっかり職場の環境を見なおしてみましょう。

コロナで問われる
想定外のことにも対応するのが行政責任
不足に気付けば必要な対策をとる

市民のいのちと暮らし、安全・安心を守ることは行政の責任です。そのために市は必要な人員や体制を備えなければなりません。

ところが1980年から始まった臨調行革路線は「小さな政府論」を掲げて、徹底した公務員削減に取り組みました。その中心は公衆衛生をはじめ医療や介護、福祉、教育などの予算を削減しており、結果として安全・安心を切り捨てでした。

自助・共助・公助で公助で国の責任放棄

本来、国や自治体の責任で行うべき行政サービスを「自助・共助・公助」と称して責任を放棄し、統合や委託、民営化して保健所削減や公立病院の削減と独立法人化、環境部門
保育所の民間委託、教育予算削減、さらに安倍内閣は水道の民営化容認法までも強行しました。そのためエッセンシャル職場はゆとりをなくし、非常時に対応する危機管理能力が低下しています。

保健所は7か所から1か所に削減

1996年まで各区にあった保健所は小倉北区アシスト1か所に統合、感染症を担当する部署は、保健衛生部保健衛生課感染症予防係7人とアシスト保健衛生課感染症予防係5人に集約され、結核やコレラ、赤痢、エボラやジフテリア、SARS、MERS、新型インフルエンザ等を想定して対応してきました。しかし、新型コロナ感染症はまさに想定外で急遽3月に応援体制(兼務辞令含む)を取り、6月と8月に増員しました。

つぶやき ウィズコロナ

ウイズコロナ?「自粛でなく、コロナ禍を自衛しながら経済活動せよ」との意味らしい。「GoTo」も不可解だ。不安で人の目も厳しく、帰郷さへままならない現実

小生20年間続けた山旅を自粛、標高518メートルの里山にひとりせっせと登っている。北側ルートは巨岩の間を流れ落ちる小さな沢に沿ったガレ道。沢を登れば3千メートル級の岩峰の気分を少し味わえる、と我慢。友と会食、語らいも自粛。酒を酌み交わすなどもってのほか。寂しい日々だが「元気でいようよ。いつもの日、再びまで…」

テレワーク、リモート会議と、働き方も変わり、コミュニケーションが劣化。文化芸術に触れる機会も少なくなった。メンタルは大丈夫かと、危惧する

解雇されてホームレスや無権利労働者が増えた。その一つUbarEats配達員。彼らのドキュメント映像をNHKが放送した。田中さんは3人家族の生活を支えるために「自由
に働ける」と選んだ。が、「いつしか数字に追われている」と、1日14時間走る。休みもない

彼らは少しでも早く運びたいのだろう自転車で高速道走行や交差点を斜め横断するニュースも。安倍政権奨励の多様な働き方の一つで労働法が適用されない、危険な働き方だ。田中さんも以前交通事故で骨折、3か月仕事ができなかったが労災も失業保険もなし。本家米国カリフォルニア州では規制強化し労働法適用を義務付けた

コロナは多くの人に不自由や不条理を強いた。が唯一、発熱には「休みなさい」と、休む大切さを教えた。これは世界標準。続けよう。