いのちと健康センター(2022/12/01 No.178)

第32回九州セミナーから

「合理的配慮」と「治療と就労の両立支援」障害・病気を持つ人が働きやすい職場

 日本国憲法は、第27条で「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」としています。ところが、これまで長い間、「すべて国民」という対象から障害を持っている人や病気になている人たちが除外されていました。そのことが、今、問題だとして当り前に追及されています。その一つが合理的配慮で、障害者の就労を含む社会参加を「権利」として保障する施策です。

障害者にも働く権利を保障

 2014年、日本も批准した「障害者権利条約」と2016年「障害者差別解消法」施行により、①差別的取り扱いの禁止②合理的配慮の不提供の禁止の考え方が示されました。 「行政機関などが事業を行う際に、障害者を理由として不当な差別的取り扱いをしてはならないこと。障害者から社会的障壁の除去を必要とする意思表示があった場合、社会的障壁を除去するために合理的な配慮をしなければならない」とし、2021年段階では公共機関に法的義務を課し、2024年には公共機関・民間企業に合理的配慮の不提供の禁止を法的義務としています。

「合理的配慮」は義務です

 例えば、車いす利用者が、入口にスロープが無く階段しかない入口を障壁と感じている場合、その原因を取り除くのは事業者の義務であるということです。車いすでも通れるスペースや段差をなくすことは合理的配慮で、社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すものです。
 障害者雇用の法定雇用率は公務では2・5%ですが、障害を持っている人が安全で快適に働くことが出来る職場にすることは、すべての労働者が働きやすい職場を作ることと併せて、職場で障害者をサポートする体制を作ることも必須です。

病気を持つ人も働きやすい職場

 今や「がん」は国民の2人に1人が罹る病気です。がん治療が進歩して5年生存率は70%に迫ろうとしています。同時に働く世代の発病も多く、25%近くが就労世代のガン患者です。ところが、厚生労働省の調査では、「がん」になった労働者の30%が依願退職し、4%が解雇されたと報告しています。働き手の中堅世代を失えば大きな損失にもなります。
 「がん」治療しながら働き続けることが出来る支援制度がなければ、がんを患うと生活基盤さえも失うことになります。健康を害しても働き続けられる権利の実現が必要です。
 「治療と就労の両立」が保障される職場づくりは、憲法27条「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」を実現する上での大きい一歩です。そして、障害を持っている人や病気になている人も、人権を保障された職場となります。

ジェンダー平等世界一 アイスランドの取り組み

 ジェンダーギャプ指数11年連続世界1位のアイスランド。そのきっかけは、1975年10月24日「男性優位の社会を変えよう、給料格差をなくせ」と国内の9割の女性が職場や家事を放棄する一斉ストライキに立ち上がりました。その日以来、「女性の休日」として定着し、数次にわたる女性のストや抗議行動を通じて、世界で最も男女の格差が少ない国を実現しました。

ジェンダー平等、育休は男女共に6ヵ月

 アイスランドもかっては、育児や家事は女性が担うものという考え方で、社会進出や賃金など男性優位な社会でした。一斉ストライキを機に、ジェンダー平等をめざす半世紀の取り組みが大きく進み、①2018年世界で初めて男女同一労働・同一賃金を企業に義務付ける法律が制定されました。②ジェンダークオーター制度(役員の40%以上が女性)によって、 現在、地方自治体の議員の約半数、国会議員の63人のうち30人、閣僚11人のうち5人を女性が占めます。③2000年に制定された育児休暇制度。現在育休は母親と父親がそれぞれ6ヶ月づつ取得でき、さらに両親で6週間シェア取得出来る権利があります。企業は本人の希望に反して取らせない場合には行政が介入し、罰金が課されます。育休期間中の給料は、8割を国が補助します。そのため男性の育児休業取得率は86%(日本は7・48%)と高く、女性にとっても働きやすい環境となっています。一斉ストライキからの取り組みと育児休暇の制度などが、現在の男女平等の価値観を社会全体に行き渡らせているようです。

つぶやき

Jアラートに思う

「文化の日」の朝、のんびりテレビを観ていた。突然、黒字に赤い線が入る画面には「ミサイル発射、ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又は地下に避難してください」の文字。アナウンスが繰り返される▼Jアラート初体験。避難する地下はどこにある?ミサイルが落ちてもマンションの1室にいる私は大丈夫?疑問があふれる。どのチャンネルもJアラートに切り替わり、どのチャンネルも疑問には答えない▼アナウンスに「7時43分頃発射された模様。日本に到達は10分後…」が加わる。8時を過ぎても繰り返された。なんだ、もう通過してるじゃん。官邸との中継や専門家の話が加わる。当初は日本上空を通過する(した)はずが、あれあれ、ミサイルが日本海で消失した▼Jアラートの正確さや迅速さを問うつもりはない。ミサイルは発射されたら10分足らずで日本に到達する。街の至る所に、家庭に地下壕でもなければ避難できまい。何のため、全放送局が延々と放送か?疑問が湧く。政府も、マスコミもミサイルが発射されたらどうするのかではなく、発射されないようにするには、どうするのかを考えなければ▼朝鮮半島と日本海で米韓の海軍と空軍が大軍事演習、標的は北朝鮮。日・米・韓は軍事同盟で連携。独裁者には恐怖だろう▼文化の日は、ミサイルが飛んでこない平和な世界を作るため、文化を進める日だったことを忘れないで欲しい。(P)