いのちと健康センター(2021/08/01 No.162)

給与はそのまま 週4日労働「大成功」 アイスランドで実証実験

 アイスランドで週4日労働制度導入の実証実験が行われた。実験は参加した大半の職場で生産性が維持されるか向上し、労働者のストレスが軽減されたことがわかりました。
 アイスランドで持続可能な民主主義の実現を目指す団体「アルダ」が7月4日付で調査結果を公表、「実験は大成功だった」と評価しました。

勤労者の1%以上が参加

 アイスランドは、高福祉国の北欧諸国のなかでは例外的に、労働時間が比較的長い国です。実験は、労働組合や市民団体の運動を受けて、アイスランド政府とレイキャビック市議会が2015年から19年にかけて実施。労働者の給与水準を維持したまま、労働時間を週40時間から週35時間~36時間に短縮しました。
 この実験は保育施設や病院、福祉施設など、様々な公的機関の職場で実施し、勤労者人口の1%以上に当る約2500人が参加しました。

時間短縮を勝ち取る

こ の結果を受けて「労働組合は、19~21年の団体協約交渉で恒久的な時短を勝ち取り、現在国内の86%の労働者がこれまでと同額の給料を受け取りながら時短勤務に移行または移行する権利を獲得した」と、アルダは伝えています。

ストレスが減り健康改善

 報告書によると、労働者のストレスや燃え尽き症候群のリスクが軽減されたほか、健康やワークライフバランス(仕事と生活の調和)、家族と過ごす時間や趣味に費やす時間、家事をする時間が増えたと報告しています。
 調査ディレクターは「公共部門が労働時間短縮の先駆者としてふさわしいことを示した」と、連立与党の議員は「時短は人々により大きな自由と、自らの労働時間の柔軟性を与える。週30時間労働を目指して、この道を進むべきだ」と述べています。

他の国々でも時短実施

 スペインでは新型コロナウイルスの影響もあり、企業の週休3日制を試験的に導入しています。ニュージーランドでは、食品・日用品大手ユニリーバが、給与は据え置きで労働時間を20%削減する取り組みを試験的に行っています。また、英プラットフォーム・ロンドンの週4日勤務キャンペーンに関する5月の報告書は、労働時間を短縮することでイギリスの二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる可能性を示唆しました。

日本は、今後の運動次第

 イスランドでの試みは、現代において労働時間を短くすることが可能なだけでなく、進歩的な変化を生み出すことも可能であることを教えています。かたや日本は、世界から「カロウシ」と批判される超長時間労働の国。「眼に鱗」と学び、過労死ゼロの運動に弾みをつけたい。

最賃全国一律28円引き上げ

 今年の最低賃金改定の目安は、全国同額で時給28円、3.1%の引き上げとなり、目安制度発足いらい最高額となりました。全労連・国民春闘共闘などが「コロナ禍こそ国民生活を支えるエッセンシャルワーカーのために大幅引き上げを」と訴え、世論と運動を広げた反映です。
 目安の小委員会報告は、最賃引き上げで「経済の好循環を実現させることや非正規雇用労働者の処遇改善が社会的に求められている」と述べています。 
 全労連・国民春闘共闘は、最低生計費調査に取り組み、全国どこでも時給1,500円以上必要なことを明らかにしました。
 大分県は、最賃792円(最下位)ですが最低生計費(25歳独身男性)は1,725円と過去最高額になったと発表しました。
 地域をランク分けする目安制度そのものを見直す審議も行われています。221円まで広がった地域間格差を解消するには、全国一律制度確立に踏み出すことが求められます。

地方審でさらに引き上げを

 今後、地方最賃審議会での審議が始まります。昨年は中央の目安額がないもとでも40県が1~3円引き上げ、地域間格差を2円縮小させました。大幅引き上げと格差是正の闘いはこれからが正念場です。

つぶやき

ガン初体験記(検診)

 人と人のふれあいが社会を豊かにする。その社会に新型コロナが侵入し、パンデミックに。「ふれあいを断つ」が唯一の策とか。自粛生活に明け暮れる。満腹と違う、胃袋に物がつかえる感じが、でも受診自粛。年が明けたがコロナも、違和感も治まらない。「お義父さんの喜寿祝、長良川の鵜飼にしましょうよ」も、何時しか沙汰止みに▼違和感が酷くなり胃がん検診。「ハッキリ言うが大変悪い。悪性の進行性ガン」が、医者の第一声。腫瘍は潰瘍状で、胃の出口に直径10㎝。「手術で済めばいいのだが…」、頭を過る▼息子に「○○病院はガン手術するの?」と聞かれる。考え込み、体験者の長兄に電話。「想定外の事が起きた、が病院に蓄積された知見があり救われた」と▼セカンドオピニオンを要請。医療センターへ転院。血液やCT等などの検査結果はステージ2相当、だが「切ってみなければ百%は分からない」と。外科へ。患部だけでなく呼吸器や循環器等、歯科まで検査した。手術に耐られる体力かやリスクを事前に除くためだろう。喘息の疑いがあると、咽喉の拡張剤を吸引▼手術前日、息子同伴で詳細な病状と処置が説明された。腹腔鏡術で胃を3分の2切除、念の為十二指腸を少し長く切除し縫合。胃は小腸に直接繋ぐ。…。最後に「がん細胞が胃壁から滲み出て腹膜に降り注ぐケースがある。手の施しようがない」と、ショッキングな話も▼息子は「したいこと、考えんと!」と真顔で。私は山行の事を考えていた。腹腔鏡術なら腹筋は大丈夫、登山OKだろうと▼HCUはコロナ患者に転用、ICUも重篤患者で一ぱい。術後直接病棟に帰されるらしい。(P)