いのちと健康センター(2022/01/01 No.167)

ワークライフバランス 人間らしく働ける職場に 

余裕をもって健康・安心・安全第一の人員配置を

コロナ禍を総括し働き方を考え直す

 コロナ禍のもと、職場での働き方働かせ方が大きく変わりました。
陽性者の特定や追跡調査、検査の実施、入院調整、報道機関対応など、そして給付金支給やワクチン接種対応、さらに災害時の対応や他課の応援やイベントの対応などが、通常の日常業務に加えて要求される現実。 コロナ禍を経験して、改めて感染症などの非常時を想定した対応が可能でなければ市役所の業務全般が成り立たないことを知らされました。そして、職員が健康に人間らしく働ける職場の大切さを教わりました。
私たちの職場は通常の日常でも必要な人員が足りているでしょうか。

『人が足りない』/残業調査

 昨年10月に実施した本庁での残業実態調査では337人の方からアンケートが寄せられました。時差出勤や時間外勤務、人員体制などについての設問では94人の方から意見を寄せていただきました。また、28人から切実な人員不足の実態記述がありました。順次紙上でご報告します。こうした事態にも拘らず行財政改革やDX推進計画などにより、さらなる効率的な業務の推進や業務の民間委託など人員削減が進めています。

余暇も睡眠も働くことも大事

 私たちの職場での働き方・働かせられ方が「人間らしい」ものになっているでしょうか。欧米の労働者が百年以前に勝ち取った「労働に8時間、余暇に8時間、睡眠に8時間」を、せめて守れる職場にする、そうした年のスタートにしましょう。

過労死・労災認定基準の改定

 「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心 疾患等の認定基準について」および「認定基準に係る運用上の留意点」が昨年改定されました。
「新基準」について「発症前1ヵ月80時間、2~6ヵ月100時間を超える時間外労働」という大枠は変わりませんでしたが、「…ただし、時間外労働時間65時間水準において、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的な評価を行う」と明記させました。これは、被災者の声や「WHO/ILOの脳・心臓疾患と長時間労働とのリスクに関する報告」や「過労死防止大綱」の改訂など全国の運動によるものです。過労死の労災認定基準は、被災者救援と同時に過労死を出さない職場づくりの指針となるものです。しっかり守らせましょう。

「月45時間」を基準にせよ

 業務と発症時間の関連での時間外労働時間数は現行のままです。 しかし、「疲労の蓄積が起こる」とされる「月45時間」が本来の基準です。せめて「発症前1ヵ月80時間、2~6ヵ月100時間を超える」としている基準を、早急に「月65時間」に改めるべきです。
 諸外国では、週4日労働制の実証実験や実施機運が高まっています。働き過ぎて身体を壊すことがあってはなりません。私たちも人間らしい働き方をめざした取り組みを広げましょう。

ヨーロッパやアメリカで週4日労働の機運

 昨年11月、イギリスのA銀行は、賃金を減らさず週4日労働制を導入。制度の導入により「従業員が情熱的に物事を追求したり、家族と過ごしたり、より健全なワーク・ライフ・バランスを実現できた」と強調。
 アイスランド政府は15~19年に実証実験を実施。大半の職場で生産性が維持ないし向上、労働者のストレスが減少したと報告しています。スペインは昨年1月、労働者の賃金を維持しつつ週4日労働制に移行する実証実験に企業が合意しました。
 また、「週4日労働制を実験した国や企業の多くで生産性の向上や賃上げなどが確認された」と指摘しています。
 ヨーロッパで週4日労働制の実証実験が広がる中、アメリカでも議論が活発化しています。 昨年7月に労働時間を週40時間から32時間に短縮して、事実上週4日労働制にする法案が既に出され、主要な労組がこの法案を支持しています。

「利益よりも健康や幸せ優先」

 アメリカやカナダでは、「企業の利益よりも労働者の健康や幸せ、尊厳を優先する時」「週32時間労働は(企業利益と労働条件の)バランスをとるうえで大きな役割を果たす」と企業が6ヶ月間、週4日労働制の実証実験に参加する見込みです。
 ニュージーランドやフィンランドの首脳も賛意を示すなど世界的な広がりを見せています。

残業実態調査アンケートの声①

●業務量に見合った人員が確保されておらず、夏季休暇もろくに取ない。メンタル病みそうです。
●避難所運営、ワクチン接種や他イベントに駆り出され振替休日処理にされるが、有給休暇を全て消化できない。振替休日処理は結局「ただ働き」の強要でないのか。せめて時間外勤務手当処理してほしい。まさに「強制労働」状態だ。
(次号へつづく)